2019年10月4日金曜日

【随筆】夏すぎて、秋きたるらし。

夏すぎて、秋きたるらし。


・・・そう思ってみたものの、今年何度目かの台風が暖気を運んできて、とりわけ秋めいた感じはあまりない。


とはいえ、郊外の田園では稲の刈り入れがあらかた終わり、また街の木立ち・・・たとえば桜の木は落葉が始まるなど、確実に秋の訪れを感じさせる。







・・・さて! 突然ですが、わたしは桜のシーズンは1年に2度あると思っている。 ひとつは当然お花見のシーズンで、そして二つ目が落葉後の、まさにいまの季節だ。


「は? 落葉した桜のどこに見どころがあるんねん!」


・・・そうツッコミを入れるのはごもっとも。 しかし、話を最後まで聞いて下さい。


それは、「落ち葉」がカギとなっている。 あなたは、桜の葉を塩漬けにしたものが、桜餅を包む材料になっていることを知っているでしょう。 その、桜の葉の香りを思い出してください。 ・・・そう、ごくまれに条件が整えば、桜の樹が落とした葉が、えもいえぬいい香りを放つ場面があるのだ。







それはまだ、あたたかい秋の雨上がりに、葉を散らした桜並木で見られる現象だ。


その香りは漠として淡く、儚い香りなので、ガムを噛んでいたりコーヒーを飲みながらでいたら、気づくことはまず無いだろう。 ましてや、煙草を吸っていたら分かるはずもない。


おそらくそれは、桜の葉が自然に醗酵して、その結果、えもいえぬいい香りを放つものだと推測する。 その条件がレアなことに、アスファルトなど舗装した道に積もった桜の葉では、どういう訳かいい香りを嗅いだことはない。 水の浸み込む土があるといった環境ではないとダメなのだろうか。 また、そういった条件にかなう環境であれば、必ずいい香りがするのかといえばそうとも言えず、なんとも不思議な現象なのです。


そんなわけで、秋の日に葉の散った桜の木の下を歩くとき、わたしは嗅覚を研ぎ澄ましながらそこを通り過ぎる。 まれに桜餅系のいい香りを感じられたら、100円玉を拾ったような、そんなささやかなうれしさを感じてしまう。 w







(・ω・)(・ω・)(・ω・)




☝・・・さて、こちらは香りのあるお酒で、「ズブロッカ」という洋酒。 「桜餅の香りのお酒」ということで、酒好きの間で知られている。 でも原料に桜の葉は使われておらず、特別な牧草が香りの元なんだって。


わたしがかつて好きだった人が、このズブロッカをずいぶんと気に入っていてね。







また話題が飛びますが、



☝・・・昨年大ヒットした米津玄師さんの「Lemon」の曲中に


❝胸に残り離れないレモンの匂い❞


・・・というフレーズがあるけれども、わたしからすれば桜の葉、そしてズブロッカの香りがそれにあたる。 とはいえ、米津さんの「Lemon」には亡くなったお祖父さんとの思い出が込められているというから、少し意味合いが違うかな。


こういった思い出を誘う香り、残香は誰にでも一つくらいはあると思う。







夏すぎて、秋きたるらし。 暖色の衣干しましょ、ベランダの片隅に。


(つづく)




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('◇')ゞ



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