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関連する前回
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キャラ絵小話!有馬晴信さん編(5)
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第1回はこちら
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ときに慶長13年、晩秋ーーー 西海の沖合いでは大小100余りの和船が船団を組み、長崎に向かって航海を続けていた。 その船団を率いるのは有馬家の当主・晴信だ。 彼には「カピタン・モール(官職名。マカオ総督のこと)を処断せよ」という大御所・徳川家康の厳命が言い渡されている。
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☆『戦国姫譚MURAMASA』より、姫化した有馬晴信
有馬晴信
「カピタンめ! 首を洗って待っていろ!」
岡本
「・・・まだ戦いが起こると決まった訳ではありますまい。w とはいえ、あの司令官はいささか好戦的。 戦支度で臨むのは正解でしょう」 駿府から連絡役として送られてきた岡本大八が感想を述べる。
有馬家の重臣
「これだけの戦船が揃うのは最近では稀なこと。 必ずや南蛮人どもは武威に屈し、大人しく殿の命に従うかと!」
晴信
「うむ。 それゆえの、今回の大人数での船団編成だ。 有無を言わさず取り囲み、威圧のもと捕縛してくれようぞ!」
様々な困難を克服して船団を準備・編成した有馬晴信の心は高ぶり、まさに戦場に赴くときのそれであった。
船の見張り役
「お殿様ー! 長崎の入り口はもうすぐですけん」 ・・・あと1・2刻足らずで有馬船団はポルトガル船を包囲する。 そのような状況であった。
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☆『グーグルマップ』より、現在の長崎港周辺
☝・・・長崎港ーーー。 長崎とはその名の通り、湾の両側に小高い丘が並んで連なり、〝長い岬”ともいうべき独特の地形を成している。 地名というのはなかなか、その地形の特徴を素直に言い表しているものだ。
長崎港は、小高い岬に覆われた地形のため、港から外海の様子を直接うかがうことはできない。 ・・・このことは、これから港を襲撃するものにとっては相手に気取られる恐れがなく、都合がいいと言えた。
有馬晴信が船上から陸方向を眺めてみれば、異変を知らせる狼煙もなく、まさに予定通りの異常なし。
「このまま湾内に船を進めるぞ! まずは小舟が先発せよ。 大船はその後に。 岩礁に注意だ」 晴信は長崎湾の入口で下知を飛ばしていた。 下知は太鼓といった鳴り物で旗艦から各船へと伝えられる。 船団がまさに湾内に入ろうとしていた・・・そのとき。
長崎の湾内から一隻の船・・・和船があらわれ、旗を大げさに振りながら、こちらに向かって何かを訴えてきている。 火急の用でもあるのだろうか? ・・・目を凝らしてその旗印を確認してみれば、それは長崎奉行・長谷川左兵衛の船であった。
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☆『戦国ixa』より
☝・・・長谷川左兵衛の船は有馬晴信の座乗する旗艦に接近し、ゴツンとそれなりの衝撃で接触したのち、互いの船は停止した。
晴信
「長谷川殿か! いったい何事です?」
長谷川
「何事とは、こっちのセリフですぞ! 有馬殿、南蛮船に攻め込むなら何故ワシに相談をしてくれないっ。 長崎のことはすべて、この長崎奉行の長谷川が仕切るところとなっている。 そのワシを抜きにして、勝手な振る舞いは許しませんぞ!」
晴信
「・・・何も合戦と決まった訳ではないぞ。 カピタンを捕縛するには、こういった船団を用意しないと逃がしかねない。 失態しないための、万全の準備である!」
長谷川
「そんなことはどうでもいい! このままあの船に寄せてみよ、あっという間にドンパチの大騒乱になるわ!」
・・・長谷川は船から姿を現すなり、大声で自らの主張をまくし立てはじめた。 彼はいったいなにゆえに、ここまで怒り心頭に達しているのだろうか? 自らのメンツが潰されたと感じているのだろうか。 あるいは、本当に真面目に長崎の町が戦災を被ることを懸念しているのか。 とはいえ、これから一戦も辞さない心持ちの武士たちに、長谷川の言葉はあまりにも癇に障った。
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☆『戦国ixa』より
晴信
「異なことを・・・ 武力衝突を恐れていては、この仕事はとてもできやしないぞ! そもそも、カピタンへの報復は、この有馬晴信が大御所様から直々にご下命を賜ったものだ!」
長谷川
「そんなことを言うならば、この長谷川も大御所様の信認を得て、直々に長崎奉行の職に任じられておる! 長谷川家は大御所様に側室を出す家柄ぞ!」
晴信
「くッ・・・!」
ここで「側室を出した家柄」と出てきたが、これを現代人の感覚で馬鹿にしていはいけない。 この時代は家康の裁量によって物事が決まることが多く、その家康に口を利ける数少ない人物が側室・お夏の方であったというわけだ。 事実、長谷川という男はそれまでろくな武功が無かったにもかかわらず、長崎奉行という要職に抜擢されている。
有馬晴信という男は、どうも上位の権威・権力というものにめっぽう弱い。 よせばいいのに、晴信はここで一歩引いてしまう。 岡本大八や有馬家重臣の仲裁も入ったことで、話し合いは仕切り直しとなった。
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☆『のぶニャがの野望』より
晴信
「長谷川殿はいったい、このわたしにどうしろと言うのです?」
長谷川
「ようやく話を聞く気になったか・・・(息を整えている) ワシらの調査では、かの南蛮船には好戦的な指揮官のもと、銃砲の扱いにも長けた船乗り200あまりが詰めている様子。 まともに取り囲めば、あのバケモノ船とドンパチなるのは目に見みえているわ。 貴殿はちと真っ向正直・・・いや、馬鹿正直すぎる」
晴信
「・・・」
長谷川
「そこでだ、この長谷川に策がある! ・・・フフフ、いかなバケモノ船とて、船を操る船乗りが船に居なければ、ただの浮かぶ箱だ。 有馬殿には、まあ、1~2日ほど港の外・・・福田あたりで待機してもらおうか」
晴信
「・・・」
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「フフ・・・、船乗りの好物といえば、昔からコレと相場は決まっておる!」 そうドヤ顔で言い放った長谷川の顔は、下卑た笑みに満ちていた。
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☆『戦国ixa』より
☝・・・長谷川の〝策”とは、酒と女性を利用することだった。 それらを使って、ポルトガル船から船員を誘引しようという作戦だ。 司令官をおびき出すのが無理であるなら、代わりに船員を誘引して船を弱体化すればいいーーー 長谷川という人物は、策謀に長けた男だといえた。
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☆「婦女遊楽図屏風」より
☝・・・長谷川が先ほどの発想を得たのは、以下の状況があったからだ。
長崎は天正年間にイエズス会によって町と港が開かれて以来、町の一角には歓楽街ができていた。 そして、そこでは大勢の女性たちが仕事をしていたのだ。
南蛮人商人や船員はカネを持っており、また彼らは総じて酒と女性に目が無かった。 当時の南蛮人商人は港ごとに「なじみの女性」がいたと言われているし、また、給金で雇われた一般船員もそれに負けじと、しばしば船の積み荷を盗んで得た金で歓楽街へと繰り出していた。
長崎の町は日本イエズス会の本拠地であり、キリスト教史にその名を残した宣教師もあまた在住した宗教都市として有名であるが、その半面、カトリックの戒律に反した悪徳がはびこる町でもあったのだ。
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長崎はまた、天領の地である。 当時、この土地一番の実力者は長崎奉行の長谷川であった。 歓楽街の女性を集合させて特別な任務に就かせることなど、彼の権力の前では朝飯前だったようだ。 正確に言えば、歓楽街の女性たちを管理する仕事・・・すなわち住民を管理するという仕事は、本来なら「長崎代官」の管轄だが、長谷川は大御所・家康から厚く信任されていることを巧みに振りかざして、その役職者はすでに彼の手下として掌握済みである。
長崎奉行・長谷川左兵衛藤広はまさしく、江戸から遠く離れた天領の地で、並ぶ者のいないローカルボスであった。
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やがて、長谷川によって仕組まれた〝謀宴”が催されることとなる。
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☆『戦国ixa』より
「マードレ・デ・デウス号」のカピタン、アンドレ・ペッソアは厳格な司令官ぶりで一般船員たちから畏れ敬われていた。 とくに、ペッソアは「紛争・騒擾の恐れあり」という情報を入手しており、今回の航海では特別に一般船員に対して「外出禁止令」を敷き、彼らを厳しく管理下に置いていた。
しかし、当然ながらこの措置は南蛮船員たちの反感を買い、また反発を招くことになる。
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☆「南蛮屏風」より
☝・・・ここで少し脱線ですが、関連として、当時のマカオ・ポルトガル商船の航海スケジュールを述べていこう。
マカオのポルトガル商船は初夏の頃に来日し、それから滞在を続け、冬の訪れ以降に帰ってゆくといった航海が一般的であったようだ。 これは東南アジアの季節風・モンスーンを使うということと、日本の台風シーズンを避けるといったことが関係している。 そしてこれは彼ら船乗りの長年の経験の蓄積によって成立した年間スケジュールだった。
そんな航海の年間スケジュールにおいて、一般船員には日本に来航してから出港するまでのあいだ、「長い自由時間」が与えられる。 そのとき、多くの船員はその自由時間を使って経済活動・・・すなわち「個人交易」にいそしむのだ。 これはどういうことかというと、日本人キャビンアテンダントが仕事上立ち寄った外国でブランド品を買い、帰国すると転売するといった行為とそれは似ている。
このようなことが船員の仕事のうまみであったが、本ストーリーでは司令官がそれを厳しく禁止していたため、一般船員たちの不満は非常に大きかった。 そのうえ、彼らはろくな娯楽のない、男ばかりの船で長期間〝缶詰”にされ、そのフラストレーションはもはや爆発寸前の状態であったのだ。
そんな折り、長谷川が甘い誘いの手を秘かに差し伸べたため、彼らはホイホイと引っかかったという訳だ。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」 と今日の格言?にあるように、この時のポルトガル船員たちの気持ちもおおむねそんな感じだったのだろう。 とうぜん彼らはカピタンに無断で、集団で船を抜け出すと、その晩は大いに憂さを晴らしたのである。
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☆『千と千尋の神隠し』より
「フフ・・・奴らめ、今頃はドンチャン騒ぎをしている頃かな?」
その夜、奉行所の政務室に詰めていた長谷川は、時が経つのを腕組みしながら待っていた。 やがて夜が深く更けたそのころ、彼はおもむろに命令を下す。
「南蛮船員どもが居る遊郭を閉門にせよ! 町の出入り口の木戸も封鎖するのだ。 そして住民どもはしばらくの間、船に乗ることと、町から外に出ることは禁令といたす!」
長谷川による〝詭謀の宴”はこうして成功し、南蛮船からかなりの数の船員が離間されたのだった。
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一方こちらは、長崎湾からやや離れた福田浦ーーー
☆『戦国ixa』より
有馬晴信の付き人
「お殿様ー! 長谷川様からの早船がやって参りましたけん、ご出陣をば!」
晴信
「・・・あいわかった。 とはいえ、今は真夜中。 兵どもには夜明けまで休むように伝えてくれ。 事故があってはならぬからな」 ・・・そう下知を出す晴信の口調に元気はあまり感じられない。
それもこれも、あの長谷川という男が・・・ろくな水軍も持たず、船戦はおろか普通の合戦で武功を挙げたことも無い、ただ妹が家康の側室に入っただけという男・・・が しゃしゃり出て、我らの戦いに偉そうにあれこれとケチをつけていった。 そのことについて、晴信は言いようのない不満を感じるのだ。
晴信のモヤモヤは収まらない。 ・・・長谷川がやったことは、確かに相手を弱体化させる妙策だといえるだろう。 しかし、どう考えてもアレは武士らしくない。 武人というよりも、人の道から外れていると言えるだろう。 とはいえ、そんな男が自分よりも高い地位に就いていることもまた事実だ。
「徳川の世を生きるということも、難儀なものだな・・・」
その夜、煩悶は晴信を眠らせることがなかった。 そしてこの時に感じた様々なことは、これからの晴信の動向・方針に重要な影響を及ぼすこととなる・・・。
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と!いうことで、今回はこのあたりでお開き。 次回はいよいよ・・・、おたのしみに。
(つづく)
※この文章はブログ主の見解です。
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